投資銀行を救済するということ
FT 大きすぎて潰せない金融機関の自己勘定取引には制約を設けるべきですか。ソロス 報酬やインセンティブの体系は統制すべきだと思います。というのは、保証を与えた以上、そうした銀行が自己資本でリスクを取って、追加的な資本投入を余儀なくされるような事態は防がないといけない。大きすぎて潰せないというコンセプトには、銀行の従業員が受け取る報酬を規制する必要性が伴うんです。
ジョージ・ソロスが語る世界経済と金融 「二番底のリスクあり」「金融機関の報酬規制を」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2031
リーマンショックに象徴される金融危機での投資銀行の救済の一方で銀行当事者の多大な報酬というのは明らかにおかしく、これに対して何らかの対応をするというのは当然だと思います。
恐らく、投資銀行のルールというのはモラルハザードを助長する構造を持っているため、ルールを変更することが必要です。失敗したときは会社を辞めるだけ(会社がつぶれるだけ)、成功したときには報酬が際限なく増える、という構造に問題があるように思えます。このようなルールのもとでは、なるべく大きな賭けをすることが最適な戦略となり、レバレッジを大きくして報酬の期待値をあげることが優先されるからです。この行動には大きく2つの問題があります。
- (1) 予想とは逆に相場が動いたときに返せない借り入れが残り、貸し手にも連鎖的に影響を与える。
- (2) ポジションが大きすぎて清算できなくなり、他のプレイヤーの取引を阻害する。
(1)は借金の焦げ付き、(2)はシステミックリスクと言われ市場の流動性を毀損するものです。どちらも自分の責任能力を越えたリスクをとっていることが原因といえます。
資本主義において、成功したときにはそれに応じた報酬を得ることは当然です。しかし、これはリスクに対する責任を前提とします。責任を取れなければそもそもリスクをとる権利をもてないはずです。救済された銀行は救済されたということによりこの原則を破っているといえます。
以上の事から、救済される可能性を持つ組織というのはリスクテイクを制限される義務を負う必要があるといえます。ソロスのいうように過大なリスクテイクの原因である報酬体系を修正することが必要ではないかと思います。