Googleというシステム

「しがらみ無しでシステムを作れたら、どれだけ楽にシステム開発できるだろうか」とよく考えるが、パソコンが5万円になってやっと買うことができる人はみんなそういう会社に勤めるだろう。そういう人たちの生活水準が高くなり給料が高くなった頃には、パソコンが3万円になってやっと買うことができる人が入ってくる。その次は1万円、次は5千円だ。ネットブックは長期的には千円くらいまで安くなって、その過程でずっと新しいホワイトカラーを量産し続け、その人たちの仕事は我々よりずっと効率的なのだ。

Googleは社員も凄いが、それ以上にマネジメントが凄いのだ。Googleを経営できるなら、他のどんな業種のどんな企業でも経営できる。数倍効率よく経営できる。


原油高と同じくらい深刻な「ホワイトカラーの仕事破壊」
http://d.hatena.ne.jp/essa/20091219/p1


グローバリゼーションによってホワイトカラーの生産性の競争になった場合、先進国は新興国に比べて不利と考えられます。先進国は何をするべきか?ですが会社レベルではマネジメントのシステムを変えることが一つとしてあると思います。会社が競争に勝つには、優秀な人を集めること、集めた人で構成された組織が市場をアウトパフォームすること、が必要です。このとき、後者を強化することがマネジメントの役割です。


商品を市場に出す場合、市場調査、企画、開発、運用など、いろいろな役割の人が関係しています。マネジメントで重要なのは、

  • (1) 各役割に対して「公正な」評価を行う(ルールを作る)こと
  • (2) これらの役割(人)のコミュニケーションのネットワークを構成する(ルールを作る)こと

であると思います。


通常のピラミッド型組織では、上司が(1)ではハブになって、(2)では部下に対する権限をもっています。しかしながら、市場の変化のスピードが速くなってくると完全に包含関係を持つようなスキルセットの系列を作ることは難しくなります。そして、これに裏付けられた階層的なポジションを想定するというのも難しくなるでしょう。市場の変化に伴って部下の方が知識経験が豊富になってしまったというようなケースが出てくる可能性もあります。


ピラミッドという構造が変化のスピードに対して弱いのは、この構造がトップの変化に対する能力に依存しているからです。どのような知識、能力が今後重要となるかは誰にも分かりませんが、各個人を常に最適なポジションに置き続ける操作を行うことが変化への対応で重要なことです。


トップレベルで全ての評価を行っていくことは社会主義と同様に難しいと考えられるため、一般的な業務プロセスのネットワークに対する分散的な評価ルールの構築が必要ではないかと思います。各個人が与えられた評価権限を行使したり、利益の最大化をはかって効率的に動いたり業務を変えたりすることで、結果としてより効率的なネットワークが構成されていくシステムというのが理想的だと思います。最終的には政府と市場の縮小版が会社の中にできると面白いかなと。


Googleのマネジメントというのはこれに近いのではないかと思っています。Googleの創業者はページランクによってインターネット上のページの評価を行ってきたからです。複雑にリンクされたページでどれが重要なのか?どれが重要でないのか?は業務プロセスのネットワークの中で各役割を持った人の評価をどのようにしていくかという問題に似ています。熱心に重要な仕事をしているふりをする人の評価は、スパム的なページをどのように除くかに似ていますし、市場競争力の元になる人への評価は、上位にどのページを持ってくるかということに似ています。Googleというのは、ネットワークと組織、ページと人、リンクと評価、のアナロジーで組織ができているかもしれません。