中国が民主主義になるとき

現在の中国の成長率は非常に高く、これがトップダウンの政治を安定させているかもしれませんが、これが頭打ちになるころに政治体制が民主主義に移行するのではないかと思っています。大きな理由は、資本主義と非民主主義が本質的にマッチしないからです。


日本の経済成長と低迷で言及したように、何を作るかが分かっているときには、トップに従順な「努力」で高い成長率を出すことができます。現在の中国の競争力は、このことと労働力の安さに依存しています。しかしながら、今の日本のように中国の水準が世界レベルになって、何を作ればいいか分からなくなったとき、経済成長は極端に悪くなると思います。日本より硬直的なtree構造のシステムでは、変化していく問題に対応していくことがさらに難しくなるからです。(別の言い方をすると日本より既得権益の層が多いから。)


資本主義とは、需要に対する供給を行った人にそれ相応の対価を与えるシステムです。どういう需要があるか、それに対する供給の方法はどうするか、が明らかではないためクリエイティビティとこれを実行するための権限(所有権とか)が重要になります。このクリエイティビティの源泉は、自由なものの見方、考え方を許容する文化、システムです。アメリカの経済の強さは、これらを強力に支援する民主主義に支えられていると思います。


現在のビジネスでは情報が中心になりつつあり、クリエイティビティの材料であるインターネットという大きい情報のプールを利用することは必然的な流れになっています。中国政府は今後、政治体制を守るためにこれを制限することと経済成長を維持するために開放することの間でジレンマを持つようになるのではないかと思います。


政治のシステムというのは、本質的に力によって決まります。どのグループがより強い力を持っているか、民主主義では国民が力を持ち、その結果、国としての力も大きくすることができました。非民主主義の場合は中央が力を持つ代わりに世界全体としては競争力を落とすことになります。すでにインターネットを利用している/資本を持っている中国国民は今後どういう判断を行うでしょうか。また、逆説的ですが、中国政府も世界レベルでの力の維持のため、権限のシフトを考えざるを得ない状況になるかもしれません。