プログラマはテクノロジストか?
テクノロジストとはドラッカーが作った言葉で知識と肉体労働を同時に使用する技術者と言う意味です。
ビジネスとは材料の調達と加工、商品の配送からなります。このプロセスに関する利益を最大化すべく改善することが研究開発です。(勿論ここでいう商品とはサービスなども含み、またほかの語も一般的な意味での言葉です。)
この一連のプロセスは手順が決まっていればソフトウェアとして自動化することができます。従って、コストを抑えて利益を大きくするということは次のことと同じです。
- (1) ビジネスプロセスを改善すること
- (2) 低コストでビジネスプロセスをソフト化すること
(1)はビジネスの定義、マーケットの把握、将来の変化の予測などを継続的に行うことです。
(2)は現在のビジネスを効果的にモデル化することです。これは高級プログラマ、ソフトウェアアーキテクトがしている仕事そのものだと思います。*1
つまり、将来のモデルの変化を予期して設計を行うことはビジネスの価値のかなりの部分を持っているといえます。
しかしながら、自動化は人からルーチンワークを奪ってしまうため、奪われた人はより不確実、リスクが大きな仕事をせざるを得なくなってしまいます。このことはよりストレスが高い状況で仕事をすることを意味するため、自動化に反対する人が出てくることが予想され、プロセスをソフト化する時の抵抗になりえます。
既に発達してしまった先進国ではこのようなルーチンワークを主とするホワイトカラーが定着しているでしょうし、このため相対的にこれから成長段階にある新興国に比べソフト化は遅れる可能性があります。
知識労働のソフト化が鍵であれば社会レベルでの設計者への権限委譲が必要ですが、上記のような推測が正しかった場合、先進国にはこういう構造的問題があるのかもしれません。
ちなみに、労働者の労働プロセスを機械に置き換えてきたテクノロジストに社会的地位を与えず軽視したイギリスは、その後、大国の地位を落としてしまったそうです。